今回は以前にも紹介しました打撲について改めて解説していきます。
スポーツや日常生活で遭遇することの多い打撲ですが、怪我をする場所や強度によって重症になるケースも少なくありません。特に今後解説する大腿部の打撲は重症化するケースの多い部位です。今回は打撲について少し掘り下げ、大腿部等を打撲した際に症状として把握しなければならない重要なコンパートメント症候群(区画症候群)について解説していこうと思います。
腕や足などの四肢は筋肉や骨、筋膜などによって血管、神経組織が囲われる構造になっています。その囲われている空間を区画といいます。(図1 赤ライン)
骨損傷や、筋損傷、血管損傷などにより、この区画内の組織内圧が上昇し、その影響で筋、神経組織の機能障害をもたらすものをコンパートメント症候群と言います。
日常で出くわすことの多くの原因は骨折や打撲など筋肉内出血によるもの、下腿などでは運動の反復による慢性型のものがあります。また、ギプス、包帯などによる過剰な固定などにより、受傷後炎症期間の間に徐々に内圧が上がりますがその圧の逃げ場が無くなり他の組織を圧迫してしまい障害を起こす場合もあります。
症状は阻血の症状(疼痛、感覚異常、蒼白、脈拍脆弱など)がみられます。コンパートメント症候群らしき症状が出現した場合、早期に区画内の減圧と循環の改善を図る為、速やかに固定の除去などの処置を施して、筋、神経組織の壊死の発生を防止しなければなりません。症状の進行が急激であれば、すみやかに観血療法(筋膜切開)が必要となり、それらしき症状が出た場合は早期に対応する必要があります。
筋損傷はスポーツ活動、就労現場で多く見られる損傷ながら、損傷の重大性に気づかれず、損傷直後からすぐに運動や作業を行うケースが多い傾向にあります。最も注意しなければならないのがコンパートメント症候群です。軽視するのではなく、筋損傷としてしっかり認識し治療する必要があるので注意してください。
今回は少し難しい内容になりましたが、打撲をした際には上記の症状を踏まえて早急かつしっかりとした判断をしなければなりません。次回は本題の大腿部の打撲について詳しく解説していきます。