大腿骨頭すべり症とは、思春期、特に12~16歳の成長が盛んな時期に大腿骨近位骨端線(太ももの骨の股関節に近い成長軟骨の部分)で大腿骨が頸部(成長軟骨より上の部分)に対して後方に転位することによって股関節の疼痛と可動域制限が起きる疾患です。特に肥満傾向の男児に多いとされ、原因としては内分泌異常や局所の力学的異常が考えられていますが明確にはされていません。
症状としては、急性・慢性・慢性経過中に急性悪化が起こったものの3つに分けられます。
急性例では、何も症状が無い状態から軽度な外傷をきっかけに強い股関節痛が起こり、患肢(痛い方の足)に体重がかけられなくなります。可動域制限を生じ、運動時痛は著しいため早期発見が可能になりますが、発生頻度は比較的低く全体の10%とされています。すべりの程度は大きいことが多く大腿骨骨折との鑑別が必要となってきます。
慢性例では、跛行(足を引きずる)を主訴として、股関節痛、大腿痛、あるいは膝関節痛が数カ月続き、運動負荷により症状が悪化します。痛みが股関節部ではなく大腿部や膝関節部にある場合は見誤りやすい為注意が必要です。軽度の症状では軽度の運動制限が見られるだけですが、症状が強くなると股関節を曲げた際に太ももをお腹につけることができなくなります。
慢性例では特に早期発見・早期治療が大切になってきますので、お子さんの日常生活動作のなかで歩行に違和感や股関節の運動制限・運動後痛などがみられた場合早めに専門医に診てもらうようにしましょう。